初期悪化(Paradoxical Response)

結核

初期悪化について

 どうも
 呼吸器の情熱です!頭痛・咽頭痛・鼻水といった多彩な症状が出ていますが
 負けずに勉強します。

 今回は結核治療中に生じる初期悪化について学んだことを整理したいと思います。

 初期悪化はIRISの中の一つと考えられる。
 
 IRIS(Immune reconstitution inflammeatory syndrome)とは
別名で免疫再構築症候群と呼ぶ。
 →免疫機能が回復してくる過程において、臨床症状が一過性に増悪する。
  回復された免疫機能が反応することで、炎症反応が増悪する。

 HIV治療で行われるART療法(多剤併用療法)にて
 本来の免疫応答が見られるようになることを指す。

 ART後に結核の発症やクリプトコッカス髄膜炎などを発症したりする。

 初期悪化は
 抗結核薬やARTを開始後に、結核菌に対して効果があるにもかかわらず、
 病変が悪化したり新規病変が出現したりすることを指す。


 生菌死菌を問わず結核菌の菌体成分に対して免疫反応が過剰に反応し

 臨床症状が悪化することの総称。

 免疫応答の回復により結核菌が急速に死滅し、
 免疫抑制状態が解除されたことで、遅れて炎症が上がる。

初期悪化の発生時期や頻度

 一般的に抗結核薬療法開始後1~6か月以内に発症すると報告がある。
 治療開始1か月以内は注意したほうがいい。

 肺結核自体の初期悪化は2.4%と頻度が少なく
 リンパ節結核・肺外結核・結核性胸膜炎では12~23%と多い。
 →肺外結核患者では注意が必要。

 結核性胸膜炎合併例は胸水増加が一般的によく見られるパターンである。
 リスク因子は様々な国から報告があるが、
 ①低栄養状態(アルブミン低値)
 ②HIV感染症の合併(ART開始するため)
 ③肺外結核
 
 が大切である。低栄養になる高齢者や免疫不全が低下している方には留意する。

初期悪化の診断

 薬剤の副作用が起きていないか?→薬剤熱、薬剤性肺障害
 結核の治療がきちんと行われているか→内服管理や多剤耐性菌の結核ではないか
 その他、日和見感染症

 結核菌の薬剤感受性検査を確認する。
 上記の除外が必要であり、臨床的に診断に難渋することはしばしばある。
 →除外診断である。

初期悪化の画像

 胸部CTにおいて初期悪化ではすりガラス影や浸潤影がみられるが、
 元病変の拡大があれば初期悪化がより疑わしい。

 薬剤性肺障害では、結核の病巣から離れた部位にすりガラス陰影が出現
 結核の悪化では小葉中心性陰影やtree-in-bud apperaanceが進展する。

初期悪化の治療

 強く薬剤性肺障害を疑わなければ、抗結核薬の中止は基本的に不要である。

 QOLを低下する恐れがあるときは症状コントロールのために
 NSAIDsや、場合によっては全身性ステロイドを用いる。

 結核菌とHIVが合併していた場合のARTのタイミング
CD4<50/μL→結核治療開始後2週間以内にARTを開始
 CD4≧50/μL→結核治療開始後8週間以内にARTを開始→2022年HIV診療ガイドライン

 ART開始後初期4週間のプレドニゾロンは、HIV感染者における
 結核関連IRISの頻度をプラセボと比較して低下させる。

 ★生物学的製剤使用中に結核になったとき

 TNF-αは、肉芽腫性炎症に寄与する炎症性サイトカインであり、結核治療に必須の免疫応答である。
 TNF阻害剤を中止することで、重篤なIRISを起こす可能性がある。

 いったん、生物学的製剤を中止し、抗結核薬を投与することを基本とするが、
 粟粒結核等の全身性結核の症例で、適切な抗結核療法にもかかわらず病勢が悪化し
 初期悪化が疑われる場合は、他の病態を除外した上で、
 生物学的製剤の再投与も選択肢の一つ。

 抗TNF抗体製剤と抗レセプター型抗TNF製剤では少し異なる。
 抗レセプター型抗TNF製剤(エタネルセプト)では
 元々、過剰なTNFが存在するため、中止すると結核増悪を招く。

 抗TNF抗体製剤→インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、ペゴル

まとめ

 ARTによるCD4細胞数上昇、ステロイド・免疫抑制剤・生物学的製剤の中止などによる
 免疫応答の回復が過剰な炎症を惹起する。

 結核治療中に病状が悪化した場合は、初期悪化も考えましょう。 
 また次回~

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